三角のレシピ

三角のレシピ

乃木坂46のMVに対するとめどないこの気持ち

乃木坂46 21stアンダー曲「三角の空き地」MVの解釈と感想

乃木坂46の21stシングルが8/8に発売されました。収録曲のMVがYouTube で先行公開されていましたが、中でもアンダー曲「三角の空き地」にハマってひたすらリピートしています。ちょっと高まりすぎてバイブスやべえので、感想を書きつけます。

f:id:fruitytriangle:20180811144337p:plain

記事概要は
⑴MVの内容と意味を個人的に解釈
中田花奈をセンターに据えた効果
⑶自分が見つけたメンバー全員の良いところ列挙

こんな感じで。

⑴MVの内容と意味を個人的に解釈
この曲で歌われるテーマは
「いつも当たり前にそこにあると思っていたものが、ある日失われるということ。」
歌詞の中では、生まれ育っていたはずの恋がいつのまにかすれ違い、枯れていたことへの後悔が「僕」の目線から語られます。
一度恋人になれれば好きな気持ちはお互いずっと続くと錯覚して、彼女の気持ちの変化に目を向けることを忘れてしまった。彼女も、彼女と通ったいつもの空き地みたいに、当たり前にそばにあるからずっと変わらないものと思いこんでいた。

歌詞において失われる存在である「恋」と「三角の空き地」は、MVのストーリーにおいては「古いダンスホール」に置き換えられています。

長く続いたダンスホールがついに閉店することとなった。幼少時からこのダンスホールで過ごしたダンサー(中田)と、仲間のダンサーたちが最後のパフォーマンスを見せる。古ぼけた店の中で踊る彼女たちだけがやけに鮮やかに輝いていて、その眩しさがこの場所の終焉を余計に惜しませるーーといった内容です。
衣装のスカートが鮮やかすぎてちょっと古くさく見えるところも、この内容であれば演出のうちに思えます。(それとメンバーを見分けやすくて便利ですね。)

もう少し各シーンの意味について詳しく考えます。

・曲の冒頭から、大人になった現在の中田と、ボブヘアの少女演じる子供時代の中田とがダンスホールの各所で同時に写されます。これは中田がこのホールで過ごした自らの過去を振り返り感傷に浸っていることの表現でしょう。

・1番ABメロでは楽屋裏で賑やかに過ごすダンサーたちの様子が描かれます。これは「いままで当たり前に思っていた日常」そのものです。それが一転して2番ABメロでは楽しさが嘘のように、何も言わずにたたずむだけのダンサーたち。客たちから忘れられ、心が冷えてしまったような彼女たちの姿は、歌詞の中で「僕」が目を向けないうちに気持ちが変わってしまった「君」のようです。このシーンは皆いい感じにお人形感を出していますが、その中で少し異質な寺田蘭世の鋭い視線が印象的でした。まるで「私を忘れるな」とこちらに語りかけるかのようです。

・ダンサーたちが情熱的に動き出すサビのダンスは「生きていた恋」の象徴です。このシーンが鮮烈であればあるほど、大切なものが失われることの無常を強く感じさせるでしょう。また、静的な2番ABメロと対比させると、この動的なシーンは彼女たち、ひいては「君」の内心の叫びのようにも見えます。

・アウトロのダンスでは、大人の姿の中田と少女時代の中田がオーバーラップします。これはパフォーマンスを観ている支配人らしき男性の目線です。舞台を見終わったあとは感極まった様子の男性。店がなくなる寂しさと、ダンサーのパフォーマンスへの感嘆、そして中田の成長を思う気持ちとがこみ上げてないまぜになっているようです。

次に述べますが、この「少女の成長」という演出が加わることで、今回のセンターが中田であることが面白く作用していると思います。

中田花奈をセンターに据えた効果
乃木坂運営の思惑や卒業センターの噂の真偽などは抜きにして、単純に楽曲とMVの質で考えたとき、今作のセンターは彼女が最適であると自分は感じました。

陰のある切ない系の曲調と振り、ダンスホールを舞台にした大人っぽい設定の映像、そして何よりダンスシーンがストーリー上の要となる構成であること。これらが中田の個性に合っていることはもちろんですが、今回の曲の主題と彼女が持つ乃木坂でのストーリーがうまく絡みあったところに見応えを感じました。

まず指摘したいのが、この曲を表現するには「時間の経過」を描くことが重要なポイントになるということです。曲中で描かれる「大切なものがいつのまにか変わってしまうこと」も「失われるものの大きさ」も、経過した時間の存在を視聴者に意識させてこそ伝わるからです。
このMVでなぜ少女を登場させたかといえば、ダンスホールで経過した時間を表現するためでしょう。
「古い店が今日潰れる」という話を突然展開されても、こちらは店の歴史など知らないのだから感情移入しづらく、物語が薄い味わいになってしまう。主人公である少女の成長というもう一つの軸を添えれば、そこに時間の厚みを象徴させることができます。

中田花奈は、「中田の全盛期」というネタのせいもあって乃木坂46初期の頃を強く想起させるメンバーの1人です。そして7thシングルでアンダーになってから17thシングルでの選抜復帰までの時間は3年4ヶ月、4thアンダーセンター以来およそ5年8ヶ月振りに21stアンダーセンターとなります。ここまでラグのある抜擢はグループ内でも特異で、彼女は「時間」に関する強いドラマを持った存在であると言えます。
また、髪型に関するエピソードも印象的です。初期の中田といえば黒髪ボブ。アンダー時代はライブ映えを意識したロングヘアでしたが、17thでの選抜復帰の際に再びボブに戻します。以前の少女らしいおかっぱボブとはまた違う、大人の女のボブになり、初期に戻ったというよりは女性としての成長を感じさせました。

すべてのメンバーそれぞれに固有のドラマがあるのはもちろんですが、こと中田に関しては「時間の重み」を感じさせる経歴と、さらにはその経歴を象徴するビジュアルのイメージがあります。これが今回の映像の主人公と演者である中田とを結びつけるのにうまく作用していました。
ダンスシーンで中田とオーバーラップする少女の髪型は、初期の中田を思わせる黒髪ボブ。主人公がこれまでの思い出をなぞりながら店の最後にダンスを捧げる姿と、自らのポジションの変遷と今回の抜擢を背後に抱えながらパフォーマンスに全力をぶつける中田の姿とのシンクロ。
初期から今までの中田を知る者であれば、ダンサーに拍手を送る支配人の表情もより胸に迫るものがあるでしょう。

その経歴を知る者には深い感慨を与え、このMVで初めて自分に注目する者には持ち前の表現力を鮮烈に印象づける。自分の個性で楽曲を見事に彩り、中田花奈は今作の主役を演じきって見せたと思います。

⑶自分が見つけたメンバー全員の良いところ列挙
主役が個性を発揮する一方で、アンダーメンバー全員がしっかりと映っているのもこのMVの良さです。
せっかく全員を見せてくれているので、最後に、全員の美しい姿について書き連ねたいと思います。

 

中田花奈→気迫と美しさが同居するダンスは圧巻。どのポジにいても表現が光るが、主役に据えればここまで力を解放してくれるのかと感動した。激しいダンスとは対称的なドラマ部分の静かな表情も良い。傘を持ち佇むラストシーンでの微笑は静謐かつ妖艶。
樋口日奈→流石のパフォーマンスと、長袖の衣装でもあふれ出る色気。なのに0:43の笑顔は穏やかでキュート。多面的な魅力を感じる。
伊藤理々杏→上記2人とのフロントでも違和感や見劣りのない表現力に驚く。曲に合ったムードを作ろうという心意気が見えて惚れる。目尻がセクシー。
寺田蘭世→2:17最高。無表情から、突き刺すような視線。この瞳の動きだけでこのシーン(舞台の裏で全員が忘れられたようにただ存在する)の意味を表現していると言っていい。
北野日奈子→こんな雰囲気も出せる子だったのか!ギャップにやられた。もっといろんな顔が見たくなる。
渡辺みり愛→相変わらずしなやかなダンスが魅力的な仕事人。1:25の手つきが好き。
阪口珠美→あどけない顔つきなのにダンスはテクニシャン。なんか無垢な少女が売り飛ばされてきて、テクだけどんどん磨かれちゃったみたいな淡い哀しみが出て、図らずもMVの世界観に奥行きが生まれた。何にせよ可愛い。
佐藤楓→たまちゃんとは対称的に、こちらは風格すら漂う綺麗なお姉さんオーラでしっかり世界観に沿ったものを見せてくれた。鮮やかなリップが似合う。
山崎怜奈→長い手足としなやかな所作がこの曲の振付に合っていて美しい。髪型と衣装も似合ってる!
中村麗乃リップシンクでの突如現れた美少女感がすごい。黒髪と黒い衣装が似合ってミステリアス。
伊藤かりん→0:55、2:25、ちょっとしたシーンなのに彼女の持ち前の生命感や親しみやすさがにじむ。その明るさが逆にこの劇場に置き忘れられているような女達の哀しみを一層引き立てるスパイスになっている。
能條愛未→いつもよりクールで大人なルックスが素敵。ダンスシーンでの安定した佇まいはまさにいぶし銀。ルージュ愛未。
佐々木琴子→またしても美の暴力が炸裂。2:08微動だにしねぇ。「静謐な美」を担わせたら右に出る者がいない。時を止める美少女。
川後陽菜→彼女の目元の美しさが際立つ衣装とメイク。濃いめのリップがお似合い。リップシンクでのどこか諦めを感じさせるような表情は世界観によく合う。
向井葉月→大人っぽいスタイリングなのに、それがかえって彼女のひたむきさと愛らしさをあぶり出している。たまちゃん、かりんちゃんと同様に本人の個性が全体にとっていいスパイスとなった。
和田まあや→普段のキャラとは裏腹に、パフォーマンスになるとしっかり仕事してくれるところがほんと魅力的。鼻の高さとスタイルのよさも素敵。環境次第でファニーにもセクシーにもなれるルックスが持ち味。
伊藤純奈→フロント級の表現力。顔の表情、ダンスの力強さ、なによりスタイリングがめちゃくちゃハマってる。今回の曲は中田花奈センターが至高だが、もし他にセンターを見てみたいのは誰かと言われれば、自分は純奈に一票。
吉田綾乃クリスティー→今回の少し暗めのライティングが大人っぽい顔立ちにマッチしてとても美しい。笑顔を封印してもにじみ出る優しいオーラは素敵な個性だ。

そして、リトルかなちゃん。ナイスアンニュイ、ナイスダンス、そしてナイスヘアスタイル。初期かなりんを彷彿とさせるね。